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INTERVIEW
2024.01.15

ブックデザインの現場

第2回    文字を知る
「文字を知る。」 ブック・デザイン特集の第2回目は本のデザインに欠かせないタイポグラフィについて、4冊の書籍から読み解いていく。 ――タイポグラフィとは 文字を美しく・時に読みやすく、意図に沿って設定すること フォント、字間、レイアウトなどの文字に関するデザインの総称
文・編集
編集部

1.廣村正彰『字本:A Book of Letters and Characters』

――科学的な視点で文字を読み解く

そもそも文字とは一体なんなのか。「読む」という機能性を持ち、美しいビジュアルの要素となる、黒い線。

『字本』では、文字の役割・意味を脳が認識する仕組みについて科学的な視点から解説している。文字は、あるときは書物の中で情報伝達の機能を担い、あるときは造形的な美しさで人を惹きつける。それらの目的が効果的に達成されるために、文字はデザインされていく。本書籍では、書体を決めるとき、文字の大きさを考えるとき、字間を取るとき、デザイナーが「感覚」として処理する部分を理論的に整理してくれる。

文字が人に与える影響は、言語伝達の機能だけではない。音・空間・触感としても脳にさまざまな影響を与える。高い音の文字、冷たい文字、おいしい文字……それらにぴったり感じられるフォントはどれが良いのだろうか。文字デザインを五感の観点から分析してみると面白い。「文字とは何か」という無意識をゼロから見直し、タイポグラフィへの見方を広げてくれる一冊だ。

 

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「字本:A Book of Letters and Characters」

廣村正彰=企画・構成・著 
ADP〔Art Design Publishing〕|3800円+税

https://ad-publish.com/order.html#K

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ヨースト・ホフリ『Detail in typography』

――「読みやすさ」に焦点をあてて文字を組む

欧文書体のタイポグラフィについて「文章が読みやすく伝わること」を目的に解説している1冊。「マクロ・タイポグラフィ」は、フォーマットや見出しを意味するいっぽうで、「マイクロ・タイポグラフィ」「ディテール・タイポグラフィ」は文字、字間、単語、単語間、行、行間といった要素を指す。本書では後者に関する基礎知識が簡潔にまとめられている。

文字の歴史や美しさにはほとんどふれず、終始「読みやすさ」に焦点を当てていく。そのため、行間、書体、コントラストなどといった要素が「読みやすさ」に与える影響を一つひとつ整理して理解することができる。

また本書の知識はとても基本的な図と地の関係についてがほとんどなので、日本語書体にも応用できると考えられる。難しく考えてしまうディテール・タイポグラフィについて目的を絞ることで、疑問を着実に紐解いてくれるだろう。グラフィック・エディトリアル問わず、平面を扱うデザイナーにオススメの書籍である。

 

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「Detail in typography」

ヨースト・ホフリ=著 山崎秀貴=訳 
Book & Design|2300円+税

https://bookdesign.theshop.jp/items/13040972

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工藤強勝『デザイン解体新書』

――本づくりの辞書

フォントの調整や字間、具体的なDTP、など本づくりの一連の作業がまとめられている一冊。本書内では、暗黙のルールとなってしまっている全ての作業に根拠が明記されている。作業する上で、根拠を知らなくてもデザインを組むことはできることかもしれない。しかし、知らずにつくるか知ってつくるかでは、大きく結果が異なってくるだろう。

また、製本方法・本のしくみが記載されているのも本書の特徴である。立体物である本には、綴じ方、ジャケット設計、背幅の設定などのデザイン要素がある。それらの要素は読者や用途によって変わってくる。例えば、教科書は子供が長期的に使うものとして耐久性のある平綴じという仕組みになっており、図鑑や図録は見やすさのために糸かがり綴じという開きの良い仕組みになっているのだ。本の綴じ方により、開きやすさ、背幅の丸みも変化し、ページデザインの組み方も配慮する必要があるだろう。そういったポスターデザインやWebデザインなどにはない、本のデザイン特有の留意点を知ることができる。

本書には、文字のデザインから製本の仕組みまで、本づくりに関して長期にわたって使える知識が詰まっている。まさに「本づくりの辞書」といえる一冊だ。

 

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「デザイン解体新書」

工藤強勝=著 
ワークスコーポレーション|2381円+税

https://www.borndigital.co.jp/book/6388.html

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工藤強勝『文字組デザイン講座』

――指定紙からプロの作業を知る

著者自身の手がけた書籍・ポスターを作例に、タイポグラフィについてまとめられた書籍。書籍サイズも286mm x 222mmと大きく、図録のような構成になっている。構想の練り方、細部へのこだわりが、実際の手書き指定紙写真を通して見られる。ミリ単位の仕事による差が記載されており、詰め作業の重要性を汲み取ることができるだろう。

また本書では見た目の美しさだけでなく、文章・書籍のコンセプトをビジュアルとしていかに伝達するかというコミュニケーションへの考え方も知ることができる。文字のルールを縛りとして捉えるのではなく、コミュニケーションの追求要素として捉えるとよりいっそう文字の魅力を感じることができるのだろう。

まさに「エディトリアルデザインの現場」を覗く本書は、タイポグラフィの指針となるはずだ。

 

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「文字組デザイン講座 」

工藤強勝=著 
誠文堂新光社|2400円+税

https://www.seibundo-shinkosha.net/book/art/20824/

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