• SPECIAL/INTERVIEW 4


    シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションー中村勇吾 Yugo Nakamura

シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション 審査員 中村勇吾氏 インタビュー

2018.3.19
杉瀬由希 Photo by 池ノ谷侑花

新しいプロダクトデザインを募るコンペティション「シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション(SNDC)」がいよいよ復活する。1999年に第1回を開催して以降毎年開催され、商品化を前提としたコンペティションとして話題を呼んだが、2008年を最後に一旦休止。それから10年の年月を経て、満を持して再開の運びとなった。記念すべき再開第1回目のテーマは「しるしの価値」。長年「しるす」文化の創造に携わってきた企業シヤチハタにとって、原点回帰ともいうべきテーマである。
テーマ「しるしの価値」について、また本コンペへの期待を、審査員のひとり中村勇吾氏に伺った。

SPECIAL/INTERVIEW 4

――10年ぶりの「シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション(SNDC)」に、webやインターフェースデザインを専門とされる中村さんが審査員として新たに参加されることは、この10年の時代の変化を象徴するとともに、主催者側のこれまでとは違う気付きへの期待も感じます。中村さんご自身は、このオファーをどのように受け止めていらっしゃいますか?

シヤチハタと聞いて思い出したのは、10年以上前に深澤直人さんが出演されていた某テレビ番組。深澤さんがシヤチハタ製品のデザインのあり方について、シヤチハタの社員にプレゼンをしている内容でした。その中で深澤さんが、みんなが使っているシヤチハタのハンコは日本の“公共物”だから、日本のインフラをデザインするような意識で取り組みましょう、というニュアンスのことをおっしゃっていていたのが、とても印象的だったんです。
今回のコンペは、情報化社会以降のデザインみたいなところが問われているのだと思いますが、僕は割とニュートラルに考えています。情報の価値が注目されるようになって数十年経ち、今はその揺り戻しでモノとしての良さをみんなが思い出し、モノに向ける視線もどんどん広がってきている。僕らの年代はモノのデザインの時代を長く過ごしてきたので、情報的なデザインの方が新しく見えますが、若い人にとっては生まれた時からあるわけですからね。IT系のデザイナーにもモノのデザインをしたがる人が増えましたし、フィジカルなところにアクセスしたいという空気は確実に広がってきている。そこにどう折り合いをつけるかというところが、このコンペの一番面白そうなところかなと思っています。

SPECIAL/INTERVIEW 4

――この10年で、モノと情報の領域は近づいたということでしょうか?

情報は、物理的には今までパソコンやスマートフォンなどの画面の中にあるものでしたが、だんだんそういう決まりきった文脈ではなくなり、モノと渾然一体になってきた。モノを使う行為そのものと結びつくような、情報的なこととモノが溶け合っていくイメージですね。Internet of Things(IoT)と言いますが、情報が霊魂とかそういう根っこにつながっている感じ。接続を切られるとただのモノだけど、繋ぐと血が通い、魂が宿る。これからますます、そんな風になっていくんじゃないかと思います。

――「しるし(印)の価値」というテーマについてはどう考えていらっしゃいますか?

ビジネスの世界では承認プロセスみたいなものだと思うんですが、もっと日常的な行為として自分の足跡を残しておくのも「しるし」かなと。大げさにいうと、自分そのものじゃない、概念の自分の痕跡を残す感じ。ツイッターで「いいね」を押すと、そこに自分のアイコンが出るように、ここにいたよとか、見たよとか、そういう自分の痕跡を外部に示すようなイメージがありますね。

SPECIAL/INTERVIEW 4

――応募される方へメッセージをお願いします。

コンペは優勝や入賞が目的ではあると思いますが、自分が考えていることを具体化して形にまとめてみるいい機会でもあります。インターネット以降のモノがどうなるのかというテーマは、これからすごく面白そうな分野だと思うんですよ。機能的に面白いものはたくさん出ていますが、それだけじゃなくて、美学的な価値観とか、そういう別の価値観に変わっていくのかなと。このコンペは商品化前提ではありますが、そういう案がいくつかあったらいいですね。せっかくですから風呂敷はできる限り広げたいですし、面白いものがいっぱい見られることを楽しみにしています。

  • シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション

    ◯ 応募受付期間 
    2018年4月1日 日 ── 5月31日 木 24:00

    ◯テーマ    
    「しるしの価値」。自分であることの「しるし」(アイデンティティ)を表すためのプロダクトもしくは、仕組みをご提案ください。

    ◯応募資格
    ・個人、グループ及び企業、団体。年齢、性別、職業、国籍不問。
    ・入賞した場合、10月12日(金)18時30分から東京都内で行われる表彰式に参加が可能なこと。(交通費補助あり)

    ○審査員
    喜多俊之(プロダクトデザイナー、喜多俊之デザイン研究所 代表)
    後藤陽次郎(デザインプロデューサー、デザインインデックス 代表)
    中村勇吾(インターフェースデザイナー、tha.ltd 代表)
    原研哉(デザイナー、日本デザインセンター 代表)
    深澤直人(プロダクトデザイナー、NAOTO FUKASAWA 代表)

    ○特別審査員
    舟橋正剛(一般社団法人未来ものづくり振興会 特別理事、シヤチハタ株式会社 代表取締役社長)
    岩渕貞哉(「美術手帖」 編集長)

    ◯賞 
    グランプリ1作品(賞金300万円) 準グランプリ2作品(賞金50万円) 審査員賞5作品(賞金20万円)特別審査員賞1作品(賞金20万円)

    ※応募方法、その他詳細は公式サイトをご確認ください。

    http://sndc.design

  • 中村勇吾 Yugo Nakamura

    インターフェースデザイナー。tha ltd.代表。多摩美術大学教授。
    ウェブサイトや映像のアートディレクション、デザイン、プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な仕事に、ユニクロの一連のウェブディレクション、KDDIスマートフォン端末「INFOBAR」の UIデザイン、 NHK Eテレ「デザインあ」のディレクションなど。

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