• 最先端のVR技術を駆使した、あたたかい作品をつくり続ける3DCGアーティスト


    伊東ケイスケ

最先端のVR技術を駆使した、あたたかい作品をつくり続ける3DCGアーティスト

「Job by 美術手帖」×「デジタルハリウッド」のコラボ連載企画「キャリアデザイン・プロジェクト」の第6弾。アニメーションの道を就職時に一時断念するものの、その後、デジタルハリウッド専門スクールで学び直し、現在はフリーランスの3DCGアーティストとして活躍している伊東ケイスケ氏。企業各種からCG制作を請け負いつつ、アーティストとしての活動にも余年がなく、ヴェネチア国際映画祭にもノミネートされるなど今話題の一人でもある。その伊東氏にこれまでの経歴と今度の展望について伺った。

最先端のVR技術を駆使した、あたたかい作品をつくり続ける3DCGアーティスト

デジタルハリウッドに入学し、一時は諦めたアニメーションの道を再び歩み始めた

──まずはデジタルハリウッド(以下デジハリ)で学ぼうと思ったきっかけなどを教えてください。

僕は多摩美術大学のグラフィックデザイン学科出身なのですがCGアニメーションも独学で学んでいたので、卒業制作ではCGアニメーションを制作しました。卒業後はアニメーション作家として生きていきたい思いもありましたが、そのことの難しさを考え断念し、一時はメーカーに就職しました。ですが、やはりアニメーション作家になる夢を諦めきれず、デジハリでCGアニメーションに再挑戦してみようと決心しました。デジハリでは、ストーリーテリングやカット割などを主に学んでいました。

──多摩美術大学での卒業制作は何を作られましたか?

「PHOTON」という作品です。「キャラクターの仕草」をテーマにした、シンプルで最小限の要素だけで構成された、実験的なアニメーションです。なので、キャラクターには表情が全くなく、仕草だけに焦点を当てました。この作品の面白いところは、不思議なことに仕草だけでもキャラクターの感情が観客に伝わるところだと思っています。実は僕は最初あまりCG表現は好きではありませんでした。ですが、CGのツルッとした感じというか無機質なところが逆に活かせないかなと思って、こういうシンプルな作りを思いつきました。現在制作している作品も、従来の冷たいイメージのCGにならないよう、暖かさや人間味を追求しています。

最先端のVR技術を駆使した、あたたかい作品をつくり続ける3DCGアーティスト

PHOTON

VRアニメーションアーティストとしての、心に訴える作品づくり

──デジハリを卒業されてからは、どのようなお仕事をされているのですか?

フリーランスで、VRアニメーションアーティスト、CGアーティストとして活動しています。VRアニメーションを制作し、国内外の映画祭に出品するかたわらで、いろいろな企業様からCG関係の案件を受注しています。2019年と2020年で2作品のVRアニメーションを制作しました。

──受注案件とアーティスト活動と2通りの活動があるのですね。前者の、VRでのアニメーションについてもう少し教えていただけますか?

去年は『FEATHER』という作品を作りました。VRゴーグルをつけて世界に入り込み、小さな人形の少女とコミュニケーションをとることができる作品です。この人形の少女はバレエダンサーになる夢を持っていて、屋根裏部屋にひっそり置かれたドールハウスで物語が繰り広げられます。体験者はその物語を見守るだけでなく、所々で、小さな羽の形をしたフェザーを少女に渡す設計になっています。フェザーは「勇気の象徴」を表しています。少女は体験者から渡されたフェザーを受け取りながら、バレエダンサーの夢へ進んでいきます。
私達は普段、他人から何かを「受け取る」ことが自分の幸せだと思いがちかもしれません。けれども、本当の幸せとは「与えること」なのではないか、という気づきを元にして制作した作品です。

最先端のVR技術を駆使した、あたたかい作品をつくり続ける3DCGアーティスト

Feather [Interactive VR Animation] https://vimeo.com/355277535

──VRという最先端技術を使いつつ、心に沁みる設定なのですね。では、今年の作品はどのような作品なのですか?

『BEAT』というタイトルで、自分の心臓の鼓動を、ハプティックデバイスで感じながら体験するVR作品です。体験者の胸に聴診器をあてることで、VR空間内に体験者の心臓を再現するんです。体験者はその心臓のパワーをロボットのキャラクターに与えることで物語が始まります。自分の心臓のパワーをライトがわりにして世界を照らしながら、ロボットとともに「心で繋がる」喜びを体験できる作りになっています。心臓の鼓動と、光り方やデバイスの振動を同期させるなど、難しい技術に挑戦しました。

最先端のVR技術を駆使した、あたたかい作品をつくり続ける3DCGアーティスト

Beat [Interactive VR Animation] https://youtu.be/Z8PRVSNQbJg

──これはヴェネチア国際映画祭でもノミネートされていますね。新しい技術と人間らしいストーリーの融合ですね。

ありがたいことに、いろいろな企業様とコラボレーションさせていただいています。誰も見たことのないものを作りたいなと思っています。みんなを驚かせたい、VRアニメーションというものに興味を持ってもらいたいとも思っているので、これからも新しいものにどんどん挑戦していきたいです。

急速発展中のVR技術と自分のスキルを合わせて、誰も見たことのない作品をつくりたい

──技術以外でのデジハリの学びにおいて、特に自分が役にたっていると思うことはありますか?

たくさんの人に出会えたことですね。お仕事もデジハリにいたころのキッカケからいただいているものが多いですし、「人が全て」だなと常々思っています。CGアニメーション制作に使うソフトウェアの操作自体は大学時代に独学で習得していましたが、デジハリの講師の方やまわりの人たちと、飲み会などを通して、将来につながるような出会いがあったなと思います。ライバルというか、すごい人がたくさんいたので、そういう人たちと切磋琢磨できたのが大きかったです。デジハリに通っていなければ今の自分はなかったですね。

──今後、挑戦してみたいことはありますか?

今、VR業界は急速に成長している最中ですよね。VR空間と現実をつなぐ方法(インタラクション)が増えてきているので注目をしています。例えば最近のものでいうと「ハンドトラッキング」という、コントローラーを使わずに素手でVR空間にあるものを触ったり動かしたりできる技術があります。それを自分のCGアニメーションと合わせたらどうなるのだろうと思っていて、いつかやってみたいです。
他にも、匂いや脳波で操作するデバイスなど、ユニークなデバイスが研究、開発されています。今までコントローラーを通してVR空間と繋がっていたことが、これからは生身に近い状態で体験できるようになる日も近いかもしれません。そういった日々刷新されていく技術と自分のストーリーテリングをかけ合わせて、これまでにない、新しい切り口の作品制作を目指していきたいと思っています。ありがとうございました。

  • 伊東ケイスケ

    フリーランスVR&3DCGアーティスト。多摩美術大学卒業後、メーカーのグラフィックデザイナーを経て、デジタルハリウッド専門スクールにて3DCGアニメーションを学ぶ。2012年よりフリーランスとして活動中。VRアニメーション『Beat』が第77回ヴェネツィア国際映画祭でノミネート。VRアニメーション『Feather』が第76回ヴェネツィア国際映画祭で招待上映。

SHARE

  • LINE
  • Facebook
  • Twitter

デザインの現場コンペの広場美術手帖SAMPLEを見る