• INTERVIEW6


    一般財団法人 カルチャー・ヴィジョン・ジャパンー井上智治

日本の美術・芸術を活性化する、カルチャー・ヴィジョン・ジャパンが仕掛けるダイナミックなアート事業

2019.2.18
文=杉瀬由希 撮影=池ノ谷侑花

日本の文化芸術の自立・持続化を目指し、クリエイター×産官学のプロジェクトを数々手がける一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン。理事長の井上智治氏に、組織の特徴や具体的な活動内容について話を聞いた。

INTERVIEW6

――どういう目的で設立された組織なのでしょうか? 設立の経緯と事業内容を教えてください。

 

カルチャー・ヴィジョン・ジャパン(以下CVJ)は2014年から活動している一般財団法人で、「文化・芸術立国日本」の実現に向け、クリエイターと産官学の垣根を越えた共創の場を創出し、文化芸術の持続的発展に貢献することを目的として設立されました。

当時の東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣が呼びかけ人となり、日本文化の発信機運が高まりやすい2020年を見据えて日本のさまざまな分野のトップクリエイターにお集まりいただいたのが始まりです。日本の文化・芸術政策は文化庁が担当していますが、そもそも文化庁設置の趣旨が古寺仏閣などの維持管理を目的としているので、文化行政で使える予算は十分とはいえないことが課題とされています。また日本の文化芸術戦略を立案する予算も人員も十分とは言えない状況でした。そこで文化庁の枠を越え、文部科学省、内閣官房、経済産業省などの文化芸術に関係する他の省庁や自治体・企業等も一緒に、文化芸術戦略を積極的に立案していこう、というのがCVJの基本的なコンセプトです。

クリエイターはさまざまな分野から2020年を超えて世界と戦える人というコンセプトで、ライゾマティクスアーキテクチャーの齋藤精一さんや森美術館館長の南條史生さん、キュレーターの長谷川祐子さん、写真家の蜷川実花さん、現代美術家の名和晃平さん、スペースコンポーザーの谷川じゅんじさんなどにアドバイザーとして参加していただいています。
最近の活動としては、年に一度程度、大々的でインパクトのあるイベントを実施するとともに、企業向けのプロジェクトや講演会といった継続的な事業も並行して行っています。

――具体的にはどのような内容のイベントですか?

 

2016年10月には六本木ヒルズの52階会場を26時まで借り切り、政府認定協賛イベントとしてCVJ主催で「Culture Vision Tokyo」を開催しました。このイベントは、同時期に開催した日本政府主催の国際会議「スポーツ・文化・ワールドフォーラム(WFSC)」と、世界の40歳以下の若手リーダーが集うコミュニティ「Young Global Leaders」年次総会のアフターディナーパーティーで、日本が誇る最先端のアート空間で国内外の多種多様な分野のトップたちがジャンルを超えて交流する、一夜限りの特別な社交場を提供したものです。伝統芸能や現代アート、音楽など幅広い分野のトップアーティスト・クリエイターたちが、インスタレーション展示やパフォーマンスを行いました。参加者は延べ1500人。皆さんから大変好評で、海外からの来賓にも高い評価を得ました。

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Culture Vision Tokyo~2020 cultural kick-off 蜷川実花《桜(SAKURA)》

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Culture Vision Tokyo~2020 cultural kick-off Rhizomatiks Architecture 《TOKYO NIGHT CIRCLE》

2017年11月には、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会と、CVJが組成した実行委員会との共催で、宮本亜門さんの企画・構成のもと「文化オリンピアードナイト」を開催しました。東京の玄関口であり国内外から様々な人々が集まる行幸通りを会場に、多くのアーティストと被災地からの学生合唱団で作り上げるALL JAPANをテーマにした舞台は、多数のメディアに取り上げられ「文化オリンピアート(オリンピック・パラリンピックの文化プログラム)」の盛り上がりに貢献しました。

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東京2020参画プログラム 文化オリンピアードナイト 宮本笑里/東京ニューシティー管弦楽団《You Raise Me UP》

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東京2020参画プログラム 文化オリンピアードナイト 全出演者によるグランドフィナーレ

2018年10月には、内閣官房のオリンピック・パラリンピック基本方針推進調査事業として、普段は入れない夜の新宿御苑を2日間限定で開放し、ライゾマティクスによる光と音のインスタレーションを楽しみながら回遊できるイベント「新宿御苑OPEN PARKプロジェクト」を開催。自然とテクノロジーが融合した独創的な空間を創出し、1万人以上の方に楽しんでいただきました。

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GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩 Rhizomatiks Architectureによるアートインスタレーション

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GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩 Rhizomatiks Architectureによるエントランスビジュアル

基軸の活動としては、2014年から継続的に開催している「Culture Vision Meeting」があげられます。毎回文化芸術に携わるトップの方々を招き、長期的な視点で日本の文化芸術を自立した持続可能な産業にしていくための課題を議論しています。

そして2018年からスタートしたのが、アーティストと企業をつなぐプロジェクト「CVJ Workplace Art Project」です。企業オフィス内で今後の更なる活躍が期待される気鋭のアーティストの作品を展示・販売し、さらには滞在制作を公開するというもので、第一弾はヤフー株式会社で実施しました。アーティストにとっては普段接点がないような人たちに作品を見てもらえ、同時に販売機会も得られるという利点があり、企業で働く社員にとっても身近に現代アートに接する環境はクリエイティブな刺激になります。アート×ビジネスでシナジーを生み出し、長期的にアート市場の拡大発展につなげたいと考えています。

――どういうところにやりがいを感じますか? またどんな人と一緒に働きたいですか?

 

まず活動意義に賛同してくれて、事業開発の視点を持ち、日本の美術・芸術を事業として活性化したいという人、このようなダイナミックな文化芸術事業を面白いと思ってくれる人とぜひ一緒に仕事がしたいですね。官や企業とアーティストでは考え方の違いが大きいので、我々がその仲介をすることにより相互の理解が深まり、アーティストの力が最大限発揮されればと考えています。また我々にとっても、文化芸術のトップランナーの方たちとお会いできるのは大変刺激的なことで、その方たちが抱えている問題をサポートしながら一緒に活動していくことで、皆さんに喜んでいただける。それが我々の大きなモチベーションになっています。

CVJの活動は、CVJが関係者の皆さんと築いた学びや意見を日本の政策にも反映させられる可能性があること、アイデアや企画案を出すだけでなく、自ら行政・企業等から資金を集め実現する力を伴っていることが特色です。

アートに興味があれば、特に詳しくなくても構いません。実際、今いるスタッフにも金融などアート以外の分野から来た人がいますし、むしろ新しい視点をもたらしてくれる人は大歓迎。今年も海外から文化関係者が大規模に集まる国際会議に関連する、インパクトのあるイベントの開催を検討していますので、日本の文化芸術産業を拡大させて世界に打って出たいという志を持っている人がいれば、きっと一緒に面白いことができるのではないかと思います。

 

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エントランスにて代表の井上智治氏

  • 一般財団法人 カルチャー・ヴィジョン・ジャパン

    本社所在地 東京都 千代田区平河町2-5-7 1F
    代表者   代表理事 井上智治
    設立年   2015年
    従業員等  5人
    http://cvj.or.jp

    理事 (敬称略、五十音順)
    増田 宗昭(会長) カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長
    大西 洋(副会長) 日本空港ビルデング株式会社 取締役副社長 執行役員
    井上 智治(理事長)一般財団法人大川ドリーム基金 理事長、株式会社美術出版社 取締役会長
    川邊 健太郎 ヤフー株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 最高経営責任者
    近藤 誠一 近藤文化・外交研究所代表、元文化庁長官
    迫本 淳一 松竹株式会社 代表取締役社長
    渡部 高士 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

    アドバイザー (敬称略、五十音順)

    阿部 千登勢 デザイナー / 株式会社サカイスラッシュ 代表取締役
    生駒 芳子 ファッションジャーナリスト / アートプロデューサー
    猪子 寿之 ウルトラテクノロジスト集団チームラボ 代表
    後藤 繁雄 編集者 / クリエイティブディレクター / 京都造形芸術大学教授 / G/Pgallery ディレクター
    齋藤 精一 クリエイティブディレクター / 株式会社ライゾマティクス 代表取締役
    笹岡 隆甫 華道「未生流笹岡」家元
    妹島 和世 建築家 / 横浜国立大学大学院Y-GSA教授 / ミラノ工科大学教授 / ウイーン国立応用芸術大学教授 / 日本女子大学客員教授
    谷川 じゅんじ スペースコンポーザー / JTQ株式会社 代表
    名和 晃平 彫刻家 / SANDWICHディレクター / 京都造形芸術大学大学院芸術研究科教授
    南條 史生 森美術館 館長
    蜷川 実花  アーティスト
    長谷川 祐子 東京都現代美術館 参事 / 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授
    林 千晶 株式会社ロフトワーク 代表取締役
    平尾 香世子 株式会社HiRAO INC 代表取締役社長
    水口 哲也 エンハンス代表 / 慶應義塾大学大学院 (Keio Media Design) 特任教授

  • 井上智治

    東京大学法学部卒業。弁護士として知的所有権、M&A、会社法務などの分野で活動。1994年に経営コンサルタント会社を設立。ベンチャーキャピタル業務、企業再生業務等も手がける。楽天野球団取締役オーナー代行、パリーグ理事長(5期連続)、関東ニュービジネス協議会副会長を務める。一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン代表理事、株式会社美術出版社取締役会長等。

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