• INTERVIEW5


    CC INC.ー戸田宏一郎

デザインの力は街をもつくれる——CC INC.が考える、デザインコンサルティングの可能性

2019.1.28
文=竹見洋一郎 撮影=小林真理子

大手広告代理店でクリエーティブディレクターを務めた後、戸田宏一郎氏が独立して、株式会社dofの齋藤太郎氏と共に立ち上げたCC INC.。CreativeとConsultingの頭文字から採った社名は、これまで培ったデザインのノウハウをコンサルティングに活かすことを謳うものだ。会社設立から3年を迎え、デザイン的思考の活用から、あたらしい仕事の領域が拓かれつつある。CC社が実践するデザインコンサルティングの仕事について戸田氏に話を聞いた。

INTERVIEW5

——「コンサルティングを、デザインの力で」という考え方はどのように生まれたのでしょうか。

前職で広告代理店のクリエーティブディレクターをしていた時には、クライアントから依頼されるのは当然ながら「広告物」でした。消費者に近い宣伝物、たとえばTVCMやポスタービジュアルなどをつくることを20年ほど続けてきました。そのうちに事業の企画や運用といった、もっと根本の部分に関わりたいという気持ちが芽生えてきました。そうでないと、宣伝物に価値付けしていくこと自体もうまくいかないと感じるようになってきたのです。それで、受けた仕事に対して自分なりの売り方のコンセプト、企画にさかのぼるような提案もしていったのですが、発想はいいねと言われながらも「でも今回は宣伝費の枠でのお願いだから……」と、なかなか実を結びませんでした。

CC社の設立は2017年1月で、3年目を迎えたところです。もし独立があと数年早かったら、ふつうにデザイン会社を立ち上げていただろうと思います。でも、いま必要なのは、デザインで広告をつくることではなく、事業そのものを形にしていくことだという確信があった。そこで「コンサルティング」という言葉を、社名として半ば無理やりつけてみたのです。

欧米でIDEO社が提唱するような「デザインコンサル」と日本の状況にはまだ開きがあります。クライアントの意識も、成果物がないものにどうお金を払えばいいのか迷っているような段階。いまCC社では従来タイプの広告案件も手掛けつつ、仕事の約4割はコンサルティング業として街づくりなど事業設計に携わっていて、年々その割合は増えています。

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CC INC.代表の戸田宏一郎氏

——具体的に関わったデザインコンサルティングの事例を教えていただけますか。

一例では、新潟駅のコミュニケーションビジョン開発のお手伝いがあります。2018年の春に、在来線と新幹線が同一の高架ホームになって、さらにCoCoLo西N+という食のプラットフォームとなるエリアが駅構内に開業しました。JR東日本の駅を新しくするとなれば、ルミネなど若者文化に向けたファッション商業ビルとして刷新するケースが典型でした。しかし、新潟の地域について掘り下げていくと、江戸時代に開港した新潟港の北前船に象徴される、交易の拠点という来歴を持っています。その個性を現代に持ち込み、単にキレイで便利というだけでなく、文化・芸術の交わるところに新潟駅が生まれ変われないか。そんな新潟駅のあるべき姿が話し合いのなかで見えてきました。

こういう大きな事業を建てつけていく過程では、チーム内のアクションの起点となるような目印、ビジョンが必要になります。「こういうことを我々はやっていきます」という意思を形にして、組織内で共有するとともに外に発信していくものです。一般の方への発信として「新潟駅N_PROJECT」のコンセプトをまとめたポスタータイプのリーフレットを弊社で制作し、CoCoLo西N+の開業にあわせて上越新幹線のすべての座席に差し込み配布しましたが、従来の広告案件であれば、そのリーフレットのみを受注し制作していたところです。しかし、どんな駅をつくるかの発案段階から、議論を重ねてプロジェクトの焦点を絞り込んでいく過程、そして最終のコンセプトをリーフレットに落とし込むところまで一貫して参加しました。

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「新潟駅N_PROJECT」リーフレット(部分)

——デザイン視点を持ったディレクターが加わることで、世界感をつくる精度も上がるし、速度も早そうですね。

広告の世界では、映像とコピー(言葉)をセットにして、一つのビジョンをつくるのが常です。ビジョンとは旗印のようなもの。これは大規模で複雑なプロジェクトにおいてこそ、強力なツールになります。長大な企画書だったものが、パッと見て伝わる形に変わることで、参加する人たちの気持ちがまとまり、人の動きを生み出していく。今何が必要で、どうするべきかを、言葉や絵にしながらどんどん形にしていくことが我々の武器です。

組織の立ち上げからアウトプットまで、常にデザインの視点を活かす余地があります。より効率良く、迅速に進めていくためにデザインコンサルティングが関わっていくメリットはクライアントにも感じていただいています。このような仕事の方法は、非常にやりがいがあり、面白くもあり、そして大変ですね(笑)

 

——広告にしてもコンサルティングにしても、ひとつの明快なビジョンをつくることが仕事になるわけですが、アウトプットはシンプルでも、その前段には膨大なリサーチや思考が必要ですよね。

特にコンサルティングとなると有形無形の仕事が膨らんでいきますし、プロジェクトに関わる時間も数年がかりとなるのが常です。ですからCC社の目指すゴールを共有しながら共に働いてくれる人たちが社内に必要です。募集するのがデザイナーであっても、個別具体のデザインだけではなく課題の上流にさかのぼって考えていくことを、働くなかで培っていってほしい。僕の意識では、デザイナーはみな、クリエイティブディレクターの予備軍です。

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戸田氏がトータルアートディレクションを努めた「HEROs_Sportsmanship for the future」のポスタービジュアル。

——広く長い射程でものをつくっていくということですね。そのようなデザイナーになるには、どんな素質が必要でしょうか。

この会社の間取りを見てください。会社の半分に近い面積が、大きなテーブルのある空間ですよね。
このテーブルはポスターの大判のB版(1030×1456mm)が2連並ぶサイズで、ものを切ったり貼ったりの作業台になるほか、スタッフ間のミーティングにも使います。しかし一番大きな役割は、クライアントを招いてプレゼンテーションし、ディスカッションをするための場です。そして疲れたら最後はカウンターでお酒も出せる(笑)。これが我々のやり方です。つまり、クライアントと一緒になって考え、同じパートナーとして意見を言い合うことを大切にしていきたい。

 

——お客さんとコミュニケーションを取るためのスペースを充分に整えているのですね。

このような環境なので、新しく会社に入ったデザイナーにも打ち合わせに参加することを推奨しています。大きい企業やプロダクションに入ると、クライアントと直接向き合うことがなかなかできないものですが、CC社ではクライアントの顔を見て、声を聞きながら仕事をしていきます。クライアントと一緒にプレゼンテーションの場に立つ、できれば自らプレゼンテーションをできるようになる。デザイナーにもそんな意識を持ってもらいたいと思っています。

CC社は一番早く一番面白いものが触れられる場所だと自負しています。デザインは閉じたものではなく、街をつくるくらいすごい力があるんだということを一緒に働く人には体感してほしいですね。

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集中して仕事をした後に一息つける休息スペースを作っています。メリハリつけて働ける環境です。

  • CC INC.

    本社所在地 東京都港区西新橋2-20-1 第2南桜ビル6F
    代表者   戸田宏一郎
    設立年   2017年
    従業員数  5人
    資本金   100万円
    http://www.cc-inc.jp

  • 戸田宏一郎

    1970年生まれ。東京造形大学卒業後、株式会社電通を経て、2017年にクリエーティブコンサルティング会社CC INC.設立。朝日広告賞、OneShow Design、D&ADなど国内外で受賞多数。

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