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【連載】ART&DESIGNの仕事 第10回 プログラムオフィサー:大内伸輔

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3331 Arts Chiyoda の3Fに所在する東京文化発信プロジェクトROOM302にて、大内伸輔さん



プログラムオフィサーという職種を聞いたことがあるだろうか。一般的には研究機関や財団などで、研究や助成プログラムの企画立案、運営管理などを行うことが仕事であり、活躍の場は必ずしもアートの現場とは限らない。今回はアートに関連する仕事として、東京アートポイント計画のプログラムオフィサー、大内伸輔(おおうち・しんすけ)さんに、行政とアートの現場の中間に位置する、その仕事の意義を聞いた。

Q プログラムオフィサーという仕事について教えてください

プログラムオフィサーという肩書きは最近になって浸透してきたもので、財団だけでなく企業にもあります。その具体的な仕事内容はそれぞれの現場で異なると思います。プログラムオフィサーは「こういう仕事をする人」という定義を、まだ構築している段階といえますね。2009年に立ち上がった東京アートポイント計画のプログラムオフィサーとしては、東京都と支援をしているアートプロジェクトの現場との間で、マネジメントを行うことが仕事です。東京都の文化事業としての予算を、無駄のない形で適正に使えるように支援し、成果を都にフィードバックして政策に還元するという大きな流れがあります。日常では支援している各アートプロジェクトの現場との細かい調整を繰り返しています。

Q 現場とは実際にどのようなやり取りをされていますか?

東京アートポイント計画のミッションのひとつは、アートプロジェクトの運営を通して、その担い手となる団体を育てていくことです。社会人経験の少ない人が多い団体をサポートする例が多くあるため、現場から出される企画書や広報チラシ案のブラッシュアップ、企画に対して調整や事前連絡が必要なことのレクチャー、いつどういうときにミーティングが必要かという細かい提案までしています。現場に行くことも多いですが、各プロジェクトの担当者とはメールや電話で頻繁にやり取りをしています。

昨年まで僕が主担当をしていたプロジェクトは、「川俣正・東京インプログレス」、「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」、「三宅島大学」です。今年からは東京アートポイント計画チーム内でリーダー的な役割となったので、昨年までの主担当プロジェクトのケアも引き続きしながら、全体を見つつ、新規に共催事業を行うことのできる団体の開拓を行っています。


左_足立区千住地域で展開する「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」でのプロジェクト「大友良英 千住フライングオーケストラ」
右_島嶼部三宅島で展開する「三宅島大学」でのプロジェクト「五十嵐靖晃 そらあみ-三宅島-」


Q 現在の仕事をされるきっかけになったことを教えてください

大学時代などはアートとは関係なく過ごしていましたが、科目履修生として大学に在学をしていた2004年に、水戸芸術館で学芸員実習をしました。ちょうどその頃にカフェ・イン水戸というまちなかアート展を開催していて、高校時代を水戸で過ごした自分としては、寂れつつあるまちにアートが展開されて活気づく様子が面白かった。担当の学芸員がたまたま現在の上司にあたる森司さんで、実習を終える頃に森さんから「取手アートプロジェクト(以下TAP)で人材育成事業(TAP塾)がある」と伺い、翌年2005年にTAPのインターンとしてアートの現場に飛び込みました。そこからTAP塾の塾長をされていた熊倉純子先生の所属する東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科での助手を経て、東京アートポイント計画立ち上げ時に志願して採用され、現在に至ります。TAPには現在も継続して関わり続けています。

Q アートプロジェクトに重要なことはなんでしょう?

活動を持続していくことが大切だと思います。東京アートポイント計画は、アートプロジェクトの運営を通じて担い手となる団体を育てることがミッションであり、10年先まで面倒を見るわけではありません。アートプロジェクトの価値を、その地域の基礎自治体や地域の人に気づいてもらい、支えてもらうことで持続していけたらいいですね。イベントを開催して終わりではなく、事業を評価し、記録として発信することで次につなげるサイクルをつくる。次につなげなければ、単発で好きなことを好きな人たちだけがやっていることになってしまう。アーティストと一緒に、社会的意義があるアートを街で展開するということを、プロジェクトを続けていける適正規模で継続していくことが大切です。

Q 仕事の意義はどのようなところで感じますか?

僕らのような調整役が存在しないと、行政側にもアートプロジェクトの現場側にも、共催事業の終了時に「そんなはずじゃなかった」という状況が生まれてしまいがちです。行政は、抱えているミッションを行政では実現できないからアートNPOにお願いしようと思うのですが、現場は必ずしもその通りに動かない。現場は現場で「こういう風にしたら楽しいはず」とプランを提示しても、行政はわかってくれない、という状況に 陥ってしまう。僕らはそこで、行政と現場の通訳となり、両者に寄り添いながら、中間でそれぞれの意見を聞きつつ方向づけをしていきます。そうすることで、アートプロジェクトがいい形で持続していく可能性を担保することができる。プログラムオフィサーは表現者ではありませんが、大きな視野で言えば社会を揺り動かす現場をつくっています。現場が育ち、活動が伝播していくことが僕らの成果ですね。調整役は必要だと感じますし、アートの現場でプログラムオフィサーの仕事を担う人がもっと増えてほしいです。

(文・写真=友川綾子


【プロフィール】
大内伸輔 おおうち・しんすけ | 1980年生まれ
プログラムオフィサー(東京アートポイント計画)
法政大学社会学部卒業後、茨城県取手市の「取手アートプロジェクト」のTAP塾でインターンを2年。その後も現場スタッフとして関わる。2006年より東京芸術大学音楽環境創造科教育研究助手。東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力してさまざまなアートプロジェクトを展開する「東京アートポイント計画」立ち上げ期(2009年)より現職。プログラムオフィサーの仕事を伝えるブログを連載中。
http://www.bh-project.jp/about/archive/tabid/111/Default.aspx


▽大内伸輔さんが所属する東京アートポイント計画事業
「川俣正・東京インプログレス-隅田川からの眺め 
汐入タワー・佃テラス・豊洲ドーム一般公開」
東京スカイツリーの建設により隅田川河岸に新たな景観が作り出されていることに着想し、平成22年度から展開する美術家・川俣正による東京を再考するプロジェクト。変容する都市景観の観測拠点として東京の水辺に完成させた3つの物見台「汐入タワー」「佃テラス」「豊洲ドーム」が11月4日まで公開中。
*詳細な場所や公開時間等は下記サイトでご確認ください。
http://www.interlocalization.net/tokyoinprogress/

豊洲ドーム ©Tadashi KAWAMATA Photo:Masahiro Hasunuma