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【連載】 ART&DESIGNの仕事 第11回 編集ライター:塚田有那

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自宅兼オフィスにて、塚田有那さん



編集者やライターは、アートやデザインの情報とその面白さを、多くの人にわかりやすいよう伝える上で欠かせない存在である。ここ数年、そんな彼らの中に、雑誌や本をつくる仕事と平行してイベントのコーディネーターや展覧会のキュレーションまで手がける、新しいタイプの編集ライターが増えてきている。アートやクリエイティブ関連の編集ライターとしての仕事を手がけながら、若手アーティストのサポートや、アートと異分野との交流を生み出すシーンにも積極的に関わっている塚田有那(つかだ・ありな)さんに、そうした幅広い活動を展開する理由を聞いた。

Q どんなお仕事をされているか教えてください。

様々な媒体から依頼を受けて執筆の仕事をしています。定期的に書いているものはそんなに多くはないのですが、女性向けの旅雑誌『BIRD』でアートを紹介するコラムの連載を担当することになりました。もう終わってしまったのですが、ここ1年ぐらい、『感覚をひらく』という媒体のFacebookページに週に1度、コラムの執筆もしていました。書籍の編集を依頼されることもあります。最近では『美術手帖2013年9月号増刊 あいちトリエンナーレ2013』の公式ガイドブックや、『メディア芸術アーカイブス』の編集も担当しました。

Q ライターや編集のお仕事以外にはどのようなことをされていますか?

イベントや展覧会の企画などもやっています。東京エレクトロン株式会社という、半導体の製造装置開発をされている企業のコポレートブランド推進室の方から、社員食堂にアート空間をつくりたいというオファーがあり、キュレーターという肩書きで、1年に4人のアーティストを紹介しています。これまで、現代美術家のHouxo Queさん、写真家の北浦凡子さん、メディアアーティストの菅野創さん、アーティストの村山誠さん、映像作家の大西景太さんと、幅広いジャンルで展開してきました。こうした一般企業がアーティストに興味を持ってくださるのは、アートと社会をつなぐ貴重な機会だと感じています。また、友人のアーティスト谷口真人の個展を手伝ったり、TEDxTokyo yzというイベントのゲストスピーカーをコーディネートしたりもしています。今後はもっと、編集ライターの仕事だけではなく、プロデュースする側にまわってやっていきたいと考えています。現在のところ、仕事の割合は半々くらいですね。


レクチャーイベント「SYNAPSE Classroom vol.2 ネコとヒトの( ) -Love Metamorphose-」開催風景


Q 現在のように幅広いお仕事をされるようになったきっかけはなんですか?

中学生の頃から雑誌が好きで、それがきっかけで写真を好きになりました。高校3年生の頃、進路を考えるにあたって、写真家を目指すか編集者を目指すか迷ったくらいです。興味の入り口が写真で、次第に映画やアートも好きになっていきました。大学時代には『BRUTUS』の編集部でアルバイトをしていて、その人脈で学生時代からライターアシスタントの仕事をいただくようになりました。このままフリーランスのライターや編集者になれないだろうかと思っていた矢先、BRUTUS編集長の西田善太さんに「器用なだけの人間になってしまったら、10年後がないぞ」と愛の鞭をいただき、今後のことを考え直す機会を得たんです。ちょうどリーマンショックや電子書籍の登場でメディアが変わる時期でもあり、それを目の当たりにしながら自分なりにこれからのメディアとは何かを考えました。

その後、大学を卒業して雑誌ビジュアル・カルチャー雑誌『+81』を発信するDD WAVE株式会社に入社しました。雑誌の仕事をしようと入った『+81』でしたが、一番若手の“なんでも担当”として、国内外からクリエイターらを招へいするTOKYO GRAPHIC PASSPORTなどのイベントを中心に担当させていただきました。1年半程勤めた後に退社し、すぐにフリーになります。ライターとして受けている執筆仕事のかたわら、イベントや展覧会企画も個人的な興味から関わっていき、次第にお仕事としても依頼されるようになってきたという感じです。こうして、様々な仕事を手がけるようになったのは、好きだったということもありますが、『+81』でカンファレンスイベントやギャラリー運営など、様々な業務に携わらせてもらった経験が大きいですね。「本やウェブにこだわらなくても、イベントも展覧会もメディアであり、やっていることは変わらない」のだと気がつかせてもらいました。

Q どのようなときに仕事のやりがいを感じますか?

いろんな人に会えることです。会いたい人に会いにいく楽しみもありますし、思いがけずに面白い話を聞けたり、知らない人と会えたり。ただ、集中して書く作業には体力が必要ですが、書けないときは大変ですね。

科学者とともに運営しているメディア活動『SYNAPSE』では、編集とコーディネートを担当しています。もともとは東京大学の広報物を手がけることになったのをきっかけに、科学とアートやデザインなどの異分野をつなぐ活動をするチームをつくりました。科学もアートもそれぞれに魅力的な分野ではありますが、それをつなぐ場があまりありません。『SYNAPSE』の活動を通じて、科学者とアーティストが出会う場所をつくると、不思議な連帯が生まれることがあるんですね。専門分野は異なりますが、たがいにセンス・オブ・ワンダーを持ち、世界を追求していこうとしている人たちだからだろうと思います。科学とアートに限らず、どの分野も他分野との接点を探してるようです。だからこそ、私自身がブリッジさせる存在になりたいな、と。東京エレクトロンのような一般企業にアーティストを紹介する際も、ただ社内に絵を飾るというだけではなく、企業とアーティスト、それぞれにとって有意義な交流を生み出していきたい。東京エレクトロンはテクノロジーの会社ということもあり、サイエンスやテクノロジーと結びついたアーティストを積極的に紹介したりしています。アート好きな人にアートを伝えるというよりは、アートを知らない人に伝えたいという想いがあります。


塚田さんが編集する雑誌『SYNAPSE』


Q これからやっていきたい仕事などはありますか?

これまで編集の仕事は、発注を受けてすることが多かったのですが、自主企画で雑誌をつくりたいなと思っています。グローバルな視点のあるバイリンガルな雑誌が理想です。世界中で同時多発的に発生している、アートムーブメントを総観することができるような。まだ企画段階ではありますが、来春の刊行を目指して活動しています。そのほか、海外のスペースや新たなメディアのプロデュースにも関わっていきたいと思っています。


(文・写真=友川綾子



【プロフィール】
塚田有那 つかだ・ありな |1987年生まれ
編集ライター
早稲田大学第二文学部卒業。2009年、学術と社会を繋ぐSYNAPSE Projectを若手研究者と共に立ち上げ、サイエンスの魅力を届けるメディア運動を発信。2013年夏より、サイエンスとアートをつなぐユニットARINARITA LABを結成し、今秋デザイナーズウィーク期間(10/26~11/4)開催のイベント「Any Tokyo」に出展予定。


▽塚田有那さんがキュレーターとして出展するデザインイベント。2013年夏より始動したユニットARINARITA LABの新企画「MIMIR Project Curation」として、アーティスト村山誠の作品を紹介する。
Any Tokyo
会期:2013年10月26日(土)~11月4日(月)
時間:11:00~20:00(*初日のみ13:00スタート)
会場:青山CIプラザ2階
http://anytokyo.com