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【連載】ART&DESIGNの仕事 第6回 NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター スタッフ:佐脇三乃里

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日本各地に広がりを見せる、地域と密着したアートプロジェクト。なかでも際立った特徴を持つのが横浜・黄金町エリアでのプロジェクトだ。黄金町はかつて特殊飲食店が立ち並んだ地域。地元住民と警察・行政が協力して違法風俗店の一斉摘発を行ったこの場所で、空き店舗を活用して活動を展開するのがNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターである。このアートNPOのスタッフとして働く佐脇三乃里(さわき・みのり)さんは、日本大学建築学科卒業後にこの道に進んだのだという。建築を学んだことが、どうアートの現場と結びついたのだろうか。


Q アートプロジェクトの現場で仕事をしようと思ったきっかけを教えてください。

建築とアートをテーマに美術館や劇場の建築計画を専門にしている、日本大学の佐藤慎也研究室に所属をしていたのがきっかけです。
2008年には、研究室のメンバーで取手アートプロジェクト2008に参加し、「+1/人」というプロジェクトを実施しました。3DKの部屋に毎日1人ずつ住人が増え、最終的に23人が共同生活するという前提で、人数に合わせた居住空間を創意工夫してつくる過程を公開しています。この時は自分たちがアーティストという立場でした。一方で、2009年には、東京文化発信プロジェクトが主催する学生とアーティストの交流プログラムに「戯曲をもって町へ出よう。」という企画で参加しました。ニブロールの矢内原美邦さん、フランケンズの中野成樹さん、ドラマトゥルクの長島確さんとの協同プロジェクトで、空き家や川原といった劇場以外の空間でパフォーマンスを行うというものです。このときは、公演場所のリサーチやお客さんの動線計画、舞台装置の制作に携わりました。

このように様々なアーティストや運営者との出会いによりアートプロジェクトの面白さを体験しながら、「どういう場所を使うとより新しい表現活動ができるのか」など、場所と表現をすることとの関係性を考えるようになり、アートの現場に建築の技術や考え方が入っていくことの面白さを感じることができました。

Q 黄金町で展開するアートプロジェクトの面白さはどんなところでしょうか。

大学の卒業研究で「クリエイティブシティ・ヨコハマ」(註1)の取組みについて研究しまして、その過程で黄金町の一連のプロジェクトを知り、アートと建築の両方の考え方で活動をしていることに興味を持ちました。また、アーティストだけではなく建築家や小説家などいろいろなジャンルの人が集まり、街の中で活動しているのが面白いと思っています。

学生時代から場所と人との関係性をずっと考えてきていて、多分野の人たちがある一つの場所に集まってきたときに起こる連鎖反応に興味があります。どういう空間デザインの場であったら、人が集うことで生まれる新しい産業やコミュニティを促進したり誘発したりできるのか。建築物というハードを設計していくというより、ソフトを設計していくことに興味と意識が向いているんですね。違法風俗店だった小さなスペースをどう活用し、どうリノベーションしていくか、それを実験的に実践できるのが黄金町の魅力でもありますね。

Q 具体的にはどのような業務をされていますか?

毎年開催している主幹事業の黄金町バザールでは、ディレクターの山野真悟さんの下で、現場を動かしている人たちをまとめていく立場になりました。また、昨年スタートした黄金町芸術学校の運営を担当しています。本校は専門的な講座から地域の方々が参加できるような実技講座まで、いろいろな講座で構成していて、コミュニティ学校のようなかたちで誰でも気軽に参加できるような学校を目指しています。今年の一押しはアートマネジメント講座。来年の黄金町バザールに受講生の皆さんが企画・参加できるように、アートマネジメントに必要な知識やスキルを学んでいくという講座です。私はこうした講座内容の企画から考えて、講師の選定や交渉も含めてすべて行っています。キュレーターや美術評論家、アーティストなど、様々なゲストを講師として迎えます。

Q スタッフとしてお仕事を始めて3年目ですが、変化はありますか?

この3年間の街の変化を肌で感じます。新しい施設ができたり、地域とアートの関係性が変わっていったり、集まってくる人の層が変わってきています。黄金町のプロジェクトをとおして、もう少しそういう変化に携わっていきたいですね。黄金町のプロジェクト自体もまだまだこれからです。もう少し時間がかかるのかもしれませんが、黄金町にいるアーティストたちがこの場所を登竜門として、どんどんほかのシーンでも活躍するようになっていってほしい。そしてそれを地域の人たちが誇りに思うようになってほしいです。シビックプライドというか、この場所が「アートの街」であるということをブランド化することができれば、もっともっと街も面白くなっていくのではないかなと思います。

私自身は、いまは地域の中にどっぷり入っているところがあるので、黄金町のプロジェクトを第三者的に客観的に見たり、外の現場がどのように創られているかを知りたいと思っています。特に、海外のアートやクリエイティブな活動が起こっている場所がどういうふうにつくられているのかということに興味があります。日本と海外の文化に対する考え方の違いが大きく影響するとは思うのですが、そもそも普段の生活の中での空間の使い方から異なると思いますし、今後の活動のヒントになることを海外で得たりしたいですね。

(文・写真=友川綾子


【プロフィール】
佐脇三乃里 さわき・みのり
NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター スタッフ
2011年日本大学大学院佐藤慎也研究室修了。在籍中は様々なアートプロジェクトに関わりながら、創造活動を展開する施設の活動と運営に関する研究を行う。2011年よりNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターに所属し、黄金町芸術学校の企画のほか、アートマネジメントとまちづくり事業の双方に関わるプログラムのコーディネートを行っている。


▽佐脇三乃里さんがコーディネートするコミュニティ学校
黄金町芸術学校2013(WEB:http://www.koganecho.net/contents/art-school
・初心者向けから専門性の高い内容の講座まで多彩なプログラムで構成
・様々な分野で活躍するアーティストやクリエイターと直接意見交換できる
・自分の都合に合わせて気軽に一回から受講ができる
・展覧会の企画・実施、作品の制作など学んだことを実践できる場がある
・1回ごとに講座を選んで受講もしくはコース受講から受講スタイルを選ぶことができる。後期コース受講の申し込み締め切りは9月22日(日)

画像上_黄金町芸術学校の受講会場前にて、佐脇三乃里さん
画像中左_まちの中のアート作品。吉野もも《街の隙間》(2012)
画像中右_黄金町芸術学校2013「アートマネジメントコース」の様子(ゲスト講師:美術評論家・福住廉)
画像下_黄金町芸術学校2013のフライヤー


註1)クリエイティブシティ・ヨコハマ_文化芸術のもつ創造性を生かし、都市の新しい価値や魅力を生み出す、横浜市が主体となって進めている都市づくり政策。文化芸術、経済振興と横浜らしい魅力的な都市空間形成というソフトとハードの施策を融合させた新たな都市ビジョンのもと、2004年の創造界隈の形成プロジェクトなど様々な取り組みが展開されている。