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【連載】ART&DESIGNの仕事 第12回 セールスマネージャー:田原新司郎

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青山の事務所にて、田原新司郎さん



アートファンにとって、アートを専門とするウェブメディアから展覧会やイベント情報を得ることは、もはや日常と言ってもいいだろう。東京のアート情報を伝えるウェブサイトや東京アートマップ、アプリなどを展開するTOKYO ART BEATも、アートファンに幅広く活用されているメディアである。今回はTOKYO ART BEATでセールス・スタッフをしている田原新司郎(たはら・しんじろう)さんに、TOKYO ART BEATの運営収入源となる広告をセールスする仕事と、仕事を通じて感じるアートシーンの現在について、話を聞いた。

Q お仕事について教えてください。

TOKYO ART BEAT(以下TAB)のウェブやフリーペーパーの「東京アートマップ」に広告を出稿してもらえるようセールスをするのが仕事です。仕事内容としては、媒体資料を作成して電話やメールで広告出稿をお願いできそうな方とコンタクトを取り、お会いしたほうが良さそうなときには出かけて行き、広告の提案をしています。営業先は美術館やギャラリーはもちろん、広告代理店やアートイベントを主催する企業なども含まれます。
TOKYO ART BEATはNPO法人GADAGOで運営しています。NPOということもあり、助成金で運営しているように思われてしまうのですが、運営資金は広告収入のみです。TABの常勤スタッフが僕を含めて3名ということもあり、セールスの仕事以外にも、Twitterの運用やニュースコーナーの編集などもやっています。



TOKYO ART BEATトップページのスクリーンショット



Q 現在のお仕事をされるようになったきっかけはなんですか?

2008年に開催された「101 TOKYO Contemporary Art Fair」でインターンをしていたのが直接のきっかけです。TAB共同設立者の藤高晃右さんが「101 TOKYO Contemporary Art Fair」の共同設立メンバーをしていたのと、その後も僕がTABの活動を手伝っていたので、広告セールス・スタッフをやらないかと声をかけてもらいました。
大学は法学部でしたが、その頃は学業にはあまり熱心ではなく、写真を撮ることのほうに興味が向いていました。写真がきっかけで美術館やギャラリーに通うようになり、次第にアートが好きになって、アートをより知りたいと、在学前後からギャラリーの仕事を手伝っていました。そこで培った人脈が現在につながっています。TABのスタッフになってから、今年で4年目ということもあり、最近では僕の後に続いてくれるような人がもっと増えてほしいなと思うようになりました。


Q お仕事で苦労されることなどはありますか?

始めたばかりの頃はセールス経験がなかったために広告も取れずに大変でした。セールスは単に広告を取ってくるだけというイメージがあるかもしれませんが、広告の目的はより多くの人に展覧会を見てもらうことです。展覧会の情報を積極的にアートファンに伝えるためのものなんですね。そうした意義が理解できたことと、予算を持っている所にお願いするとか、宣伝すべき展覧会だと感じたところにアプローチするなどといったセールスの勘所が次第にわかるようになってからは、もっと多くの方に広告を出してもらえるようになってきました。

Q ここ最近の広告主の状況に変化はありますか?

広告主は次第に増えてきています。当初はウェブメディアやアプリをあまり使用しない世代の方から理解を得ることに難さを感じていましたが、担当者が実際にTABやTABアプリを活用した経験のある世代に変わってきたことで、広告出稿のメリットを理解してもらいやすくなってきました。かつてはギャラリーでも潤沢に予算を持っている所が広告を出す傾向があったように思いますが、最近では予算の少ないギャラリーがなんとか工面してでも広告を出してくれるようになり、ウェブメディアを活用することへの理解が広まってきたのかなと。


Q ここ数年の東京のアートシーンに変化を感じますか?

TABで展覧会情報を掲載する場合、はじめに会場登録をしなければならないのですが、その登録リクエストが増えています。あまりにも多いので、一度、どのくらいのペースでリクエストが来ているのかを調べてみたところ、1日2軒ペースで新しいスペースのリクエストが来ていました。三宿の「CAPSULE」、末広町の「JIKKA」などのコレクターさんのスペースなど、これまでになかった新しい形態のスペースも増えていますね。ただ、こうしたスペースの増加とアートシーンの盛り上がり感は、まだあまり連動していないように感じます。

Q TABの姉妹サイトでNY版関西版もありますが、それぞれの地域のアートシーンに違いはありますか?

NYは東京と比べるとアート業界自体の市場規模は大きいのですが、TABのような展覧会情報を発信するメディアに対するニーズは少ないようです。ウェブやアプリのユーザー数も、東京のほうが多いです。なぜなら、NYではアートスペースがチェルシーなどの特定の地域に集まって存在しているため、情報収集が容易だからです。一方で東京は、アートスペースが広い地域に散在していることから、情報を得るためのメディアが重宝されています。
関西版は6月にリニューアルしたばかりですが、関西のアート関係者から高い期待を寄せていただいています。関西には独自のアートシーンがあるのですが、それを伝えるメディアがまだまだ少ないという事情があるからです。



TOKYO ART BEAT アニバーサリパーティーの様子



Q お仕事の意義をどのようなところで感じますか?

TABに広告を出すと若い人は見に来てくれるけれど、買ってはくれないからと、広告費を支出することに疑問を感じていらっしゃるギャラリーも実際にはまだまだ多いのですが、将来アートを買ってくれる人を育てるという意味で、広告宣伝は大事だと思います。TABは日英のバイリンガルですが、英文ページを見ている人の数は翻訳の労力ほどには多くありません。ですが、展覧会情報を掲載しているギャラリーから、「海外からの旅行者がTABを見てギャラリーに来てくれ、作品を購入してくれた」と聞くことがしばしばあります。そうした広告の役割や意義をもっと伝えていきたいですね。

(文・写真=友川綾子


【プロフィール】
田原新司郎 たはら・しんじろう |1983年生まれ
TOKYO ART BEAT セールス・マネージャー
北海道函館市出身。ラグジュアリーブランドのアートコンサルタントも手がける。趣味も仕事も、都内を中心に自転車でアートスペースを巡ること。たまにバーテンダー。