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【連載】ART&DESIGNの仕事 第1回 インスタレーター:鈴木暁生(bibariki)

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近年は、ホワイトキューブのみならず、空きビルや古民家などを展示会場とするアートの展覧会が増えている。必ずしもアートを展示することに向いていない場所で、アート作品をより良い状態で「見せる」ために欠かせないのが「インスタレーター」と呼ばれる展示設営技術者だ。こうしたインスタレーターは日本ではまだまだ少数だと言われている。今回はそのパイオニアの一人、bibarikiの鈴木暁生さんにその仕事について聞いた。

Q インスタレーターの具体的なお仕事の内容を教えてください。

展覧会の展示設営です。作品を設置したり、展示の什器(展示台)をつくったり、壁の造作をしたりします。展示場所もギャラリーだったらいいのですが、アートフェアなどは古い建物で展示することもよくあります。
例えば池袋にある自由学園明日館は、フランク・ロイド・ライトの建築で、普段は結婚式場としてよく利用されているところですが、重要文化財なので釘一本打てません。そこでの展示も実現させました。展示する作品が写真なのかペインティングなのか、小さい作品なのか大きい作品なのかにもよって、展示の仕方は変わります。それに、現場の状況でできることとできないことがある。そうしたことを判断して設営するのが仕事です。

Q お仕事をはじめたきっかけは?

2003年にセントラル・イースト・トーキョー(以下CET)に遊びに行ったのがきっかけです。使われていない空きビルでアートを見せるというのが当時のコンセプトで、それがすごく面白かった。翌2004年にはインターンとしてCETに参加しました。当時インディペンデント・キュレーターをされていた原田幸子さん(現在は小説家の原田マハさん)が企画する展示の設営をするのが役割で、その時の経験が大きかったです。CETを通じて多くの人と知り合いました。ギャラリーNANZUKAの南塚真史くんもその頃からの知り合いで、よくお仕事をしてきました。

Q どうやって専門技術を身につけてこられましたか?

僕は高卒でして、専門的な教育は受けていません。2004年のCETでそうした設営の仕事に出会ってから、イベントの大道具や建築現場の仕事をしたり、必要な技術が勉強できそうな仕事をすることで実践的に学んできました。

Q 独立されたのはいつ頃ですか?

2008年が「これで食べていける」という実感を持てたタイミングです。その時に原田幸子さんが「bibariki(美馬力)」という屋号をつけてくれました。「素晴らしい名前がひらめいたわよ」って。実は最初は全くなじめませんでした(笑)。美しくて馬力のある仕事ができるようになるという目標だと思えばいいのだと、それでやっとなじんできた感じです。多くの美術館は展示設営をイベント会社に発注するので、小さな仕事で小回りが利く展示の専門家はその頃にもほとんどいなかったと思います。水戸芸術館にはプレパレーターという肩書きの会場設営の専門家がいるのと、3331 Arts Chiyodaには施工チームがあり、そこで働いていて現在は海外研修中の澤田諒くんもインスタレーターですね。

Q 最後にインスタレーターのお仕事についてどう考えてらっしゃいますか?

インスタレーターがいれば、展示の作業スピードが各段に上がるので時間が節約できます。あとは展示の可能性がぐんと広がる。ただ、展示設営に関してはあまり予算がとれないと最初に言われることが多いので、そこに関しては僕らは厳しい立場だなと思います。
先日、ギャラリーで設営のアルバイトをしている若者と知り合ったのですが、僕や澤田くんと知り合ったことで、自分の仕事が「インスタレーター」という肩書きだということを、初めて知ったと言っていました。
井野アーティストビレッジという東京藝術大学と取手市が連携して運営している若手芸術家の共同アトリエに、展示設営のレクチャーに行ったこともあります。若手アーティストは、皆が独学で設営をやっているものですから、いろいろとアドバイスできることもありました。今はネットでも情報を得ることができますが、コンクリート壁に作品を取り付ける方法など、実際の現場でどうやっているかということを教えました。

今後はbibarikiのHPをリニューアルして、インスタレーターという仕事やDIYでいろいろなものをつくれるということを発信していく予定です。ペンキの塗り方、壁修復の仕方など、ノウハウを共有していくようなことをしていきたいと思っています。
(文・写真=友川綾子

※5月2日更新:「インストーラー」を「インスタレーター」に修正


【プロフィール】
鈴木暁生 すずき・あきお|1972年生まれ
インスタレーター(展覧会の展示設営をする人)
bibariki 代表 (WEB: http://bibariki.blogspot.jp
2004年CENTRAL EAST TOKYOの企画展「VISION QUEST」の設営に携わり、インスタレーターとして活動を開始。2008年bibarikiを設立。展覧会の展示設営(作品設置・什器製作・会場の造作)をメインに活動する。現在はプロダクトの製作をはじめ、使われなくなった家具や家などのReプロダクトにも取り組む。


▽bibarikiの鈴木暁生さんが設営を手がけた展覧会
Julia Chiang 「Coming Together, Coming Apart」
日程 : 2013年7月13日(土)〜8月10日(土)
会場 : NANZUKA (WEB:http://nug.jp/
営業時間 : 火曜日〜土曜日 11:00 -19:00(日月祝定休)


画像上_bibarikiの鈴木暁生
画像下左_川口市立アートギャラリー・アトリアにて開催の、夏休みのアトリア「ワンダートリップ〜ふしぎな旅〜スズキコージズキン展 アトリア・ワークショップ」設営風景(20011年7月)
画像下右_スズキが設営を手がけたNANZUKAでの「Julia Chiang」展