アートとデザイン業界で働きたい方のための求人情報

Column

【連載】ART&DESIGNの仕事 第3回 PRコーディネーター:市川靖子

SHARE ON




日本各地で華やかなアートイベントが開催されているいま、その裏側を支える人材として最も必要とされているのが、アートイベントの魅力を広く伝えるPRの担い手だ。PRコーディネーターはプレスリリースの作成・発信に留まらず、SNSを使用したコミュニケーションやPRのためのプレ・イベントなどで情報発信をおこない、アートマネジメントの花形といわれる職種。大型の国際美術祭のPR業務をはじめ、アートファンに向けた情報発信を幅広く手がける市川靖子さんに、PRコーディネーターの仕事や現在の関心事について聞いた。

Q アートに特化したフリーランスのPRコーディネーターをされるようになったきっかけは?

ART@AGNESアートフェアの事務局をやっていた時に、「人に何かを知らせる仕事って面白い」と思ったのがきっかけです。その後、あいちトリエンナーレ2010の広報業務をやらないかと誘ってもらい、翌年の横浜トリエンナーレ(2011年)の仕事にも繋がりました。現在もいろいろなところからお仕事を頂いています。2011年からPRを担当しているアートフェア東京は会期中だけではなく、年間を通じたプログラムやスタッフのサポートをしていますし、この秋に開催される十和田奥入瀬芸術祭のPRも手がけています。最近は、映画やダンスイベントにも関わるようになってきました。いろいろな方のお話を聞いていると、アートに興味を持つ人たちはすごく感度が高いから、そういう人たちにジャンルを飛び越えて伝えたいというニーズがあるようなんですね。


Q PR活動のうえで工夫していることはどんなことですか?

わかりやすい言葉を選ぶこと、あとは自分の熱量を高めることです。関係者に広報用のテキストを書いてくださいと頼むのですが、PRとしてはそれをそのまま使うことはできない。専門用語に「わかりやすいように」と赤字を入れることも多々ありますし、若手のアーティストには伝え方のアドバイスをしたりすることもあります。それと、私は関わるイベントの出品作家の展覧会は、どんなに遠くても見に行くようにしています。行動することで情報を増やして、自分の熱量を高める。そうすると、取材にきてくださった方に、それをそのままイベントの熱として伝えることができる。そのためには時間もお金も惜しみません。

Q フリーランスのPRコーディネーターとPR会社との違いはなんでしょう

小回りがきくことですね。それに、人と人との繋がり方が違うと思います。PRは人脈が要ですから。私は死ぬまでアートの仕事に関わっていくと思うので、現場とはすごく近くにあろうとしています。アート業界の人とは一生一緒に仕事をしていくと思いますし、これから知り合う人もうまく巻き込んで、楽しんでいきたいですね。一方で、今はアートイベントが多いので、大手のPR会社もアートに特化したことをやろうと関心を寄せています。私にとっては競合ですが、いいことですよね。

Q 現在、一番関心をもっていらっしゃるのはどんなことですか?

後継者を育てたいです。フリーランスでアートに特化したPRはいま、3〜4人ぐらいで仕事を取り合っているイメージがあります。でも結局、情報の送り先はだいたい同じですしプレスリリースの書き方もほぼ同じ。そういう感じはもうつまらないなと。若い人が集まってくれば、新しいアイデアで新しいアプローチができてくると思うので、そこに期待しています。東京にはアートに特化したPRコーディネーターがいますけれど、地方ではいないですよね。あいちトリエンナーレのPRをしていた時、私は名古屋を知らなかったので、名古屋の人がどこで遊んでいて、どんな店があるのかということを打ち合わせの度に宿泊してリサーチしていました。そういうことを、その地域で生まれ育った人はもっと自然に深いレベルでできるはずです。日本の各地域でも人が育ってくるといいですよね。広報をやってみたいという人がいれば、あらゆることを教えようと思っています。20代から経験を積めば、30代、40代にはすごい人になれますから。

Q PRに向く資質や、市川さん自身が努力されていることはありますか?

社交的で明るい人が向いています。私も以前は毎日のようにパーティーに出席し、名刺交換をして、帰ったら「ありがとうございました」とメールをするというような、細かいやり取りをやっていました。外に出るのが苦痛じゃない人がいいですね。基本的な美術史は知っておいた方がいいですし、あとは美味しい飲み屋と、安い飲み屋を知っておくこと、SNSをきちんと活用できることです。

私は自分の興味の幅を広げておくことが必要だと思っていて、アートのPRだからといって、美術館やギャラリーだけをテリトリーにするのは違う。一年を通じて娯楽に対するアンテナを広げていないといけないなと思っています。広く伝えるためには、自分と違う人の価値観を知らなくてはいけない。自分と違う人が持っている興味とか、行動のくせを知るということですね。素直にいろいろとやってみると、より効果的なPRの方法が思い浮かんだりします。

(文・写真=友川綾子


【プロフィール】
市川靖子 いちかわ・やすこ
PRコーディネーター
多摩美術大学大学院芸術学専攻修了。東京文化財研究所などを経てレントゲンヴェルケ勤務の後、ART@AGNESアートフェアの事務局代表を担当(2006-2009)。その後、あいちトリエンナーレ2010、アートフェア東京(2011~)、ヨコハマトリエンナーレ2011などのプロジェクトで広報事務局を担当。ほか、tokyo photo(2012)、京都国際写真フェスティバル(2013)、映画『ハーブ&ドロシー 二人からの贈りもの』(2013)、十和田奥入瀬芸術祭(2013)のPRコーディネートなど。

▽市川靖子さんがPRを務める芸術祭
十和田奥入瀬芸術祭(WEB:http://artstowadaoirase.jp
会期:2013年9月21日(土)~11月24日(日)
主会場:十和田市現代美術館、水産保養所(旧湯治の宿おいらせ)、星野リゾート奥入瀬渓流ホテル、奥入瀬渓流館、十和田湖遊覧船ほか
主催:十和田奥入瀬芸術祭2013実行委員会


画像上_アートフェア東京オフィスにて、市川靖子
画像下左_9月21日から開催される十和田奥入瀬芸術祭のチラシを校正する市川靖子
画像下中央_十和田奥入瀬芸術祭のチラシ色校
画像下右_アートフェア東京2013の会場風景(2014年は3月7から9日まで開催予定) Photo by Munetoshi Iwashita